2014/09/05

20140811-16 北アルプス6 Days - Day 5-6

[Day 5] 五色ヶ原 - 鳶山 - 越中沢岳 - スゴの頭
[Day 6] スゴ乗越小屋 - 北薬師岳 - 薬師岳 - 薬師峠 - 折立

* * *
Day 0 準備編 ( →  )
Day 1-2 ( →  )
Day 3 ( →  )
Day 4 ( →  )

Day 5

この日の朝日は今回の旅の中でも印象に残っている。
空は半分以上が雲に覆われていたが、刻々と色を変える世界が美しかった。

今後の行程については未だに逡巡していた。

昨日時点で今日と明日は雨の予報。そしてスゴ乗越に向けて歩き始めたらエスケープルートはない。
縦走を続けるか、それとも黒部ダムに向け下るか…。

結論を先延ばしにし、とりあえず情報収集のために五色ヶ原山荘へ向かうことにした。

昨日は真っ白で何も見えなかった五色ヶ原を堪能する。

山荘で最新の天気を確認すると、「下界の予報では今日は雨、明日は曇り」とのこと。
再び迷うこととなったが、最終的には先に進むことを決めた。

準備を整え、山荘を後にしたのは7:00だった。




スタートしてすぐに早速天気が悪くなり、テンションが下がる。
山荘から40分で最初のピーク、鳶山に到着。

越中沢岳に向かう途中には晴れ間が出た。
これぞ北アルプスといった稜線。こういう場所を歩きに来たんだった。
もしかしたら天気が持つのでは、淡い期待が頭をもたげる。

越中沢岳までは緩い登りが続く。
雲が増えてきた。淡い期待は打ち砕かれる。

9:30、越中沢岳に到着。この頃には雨が降り始めていた。

そしてこれがこの日、最後の写真となる。

雨は次第に勢いを増して土砂降りになり、風は吹き荒れ、登山道は沢と化した。

越中沢岳とスゴの頭の鞍部を耐風姿勢での停止を繰り返しながら牛歩の如く進む。
スゴの頭では先行する外国人の登山者に引き連られてルートロストしかけた。

それでもその外国人と励まし合いながら、なんとかスゴ乗越小屋に辿り着く。
レインウェアは限界を超えて全身ずぶ濡れで、ザックカバーで雨対策をした同行者の寝袋も濡れてしまっていた。

自分を含め、テントを担いだハイカーが次々と小屋泊まりへと予定を変更していた。

この日、そして次の日を合わせて北アルプスでは6人の遭難者が出たと報道された。

Day 6

この日はさらに輪をかけて荒れた。

行動を開始した時はまだ小雨だったのだが、北薬師岳を超えると雨風は急に勢いを増した。
早くもレインウェアは役目を放棄しており、運動を止めれば低体温になることは予想できた。
先を急がねば、と思った。

その時だった。

空が、光った。

心臓があれほど強く鼓動したのはいつ以来だろうか。
ここは3,000m級の稜線のど真ん中なのだ。

とりあえず稜線のトレイルから外れて岩陰に身を隠す。
雨風はさらに勢いを増しており、岩陰に居ても体の冷えは加速する。
このまま停滞して低体温を選ぶか、行動して雷に打たれるのを選ぶか…そんなことを考えていた。

少し落ち着いて雷の様子を伺う。

光ってから音が鳴るまでタイムラグがある。
そして鳴っているのは東の方角だ。

必ずしも正しい判断基準とは言えないだろう、でもより差し迫っているのは低体温の危険だと感じた。

意を決して薬師岳を超える。

3年前に立山に登って薬師岳を見て以来、ずっと薬師岳に行きたいと思っていた。
それがまさかこんな形になるなんて…写真を撮る余裕なんて無かった。

薬師岳を越えたら下りは駆け下りた。雷はどうやら遠くなっているようだ。
縦走に入ってからまったく姿を見ていない雷鳥に出会う。苦行の中せめてもの救い。

薬師岳山荘に着いた時には安心で脱力した。体は震えている。
ラーメンを注文し、体を温めたところでやっと自分の安全を実感出来た。
山荘で聞いた情報では折立林道は通行止めとのことだが、開通したらこの日のうちに下山しようと決意した。

薬師岳山荘からの下りは沢の中を歩いているようだった。足回りの防水装備など意味を成さない。
それでも、稜線を離れて雷の恐怖から逃れられた安堵の方が大きかった。

太郎平小屋に着き、休憩していると天気が急に回復した。

さっきまでの恐怖が嘘のようだ。
遠く能登半島まで見渡すことが出来る。

薬師岳もはっきりと見えている。雷に怯えていたあの場所と同じところとは思えない。

14:00、折立林道開通の報が流れる。200人の登山者が足止めされていたそうだ。
開通となれば下るしかない。街が恋しくて仕方が無かった。

17:00、折立に下山完了。タクシーで富山に向かい、久々の街を楽しんだ。

3日目に雄山の社務所で購入したお守り。
これが安全を守ってくれたのかもしれない。

お守りが無ければ…というのは比喩ではなく、何かが一つ掛け違えば遭難していたかもしれない。
少しでも危険を感じた以上「無事だった」というのは結果に過ぎず、次も同じ状況に陥った時に帰ってこられる保証は無い。
大げさかもしれないが、経験の浅いハイカーには大げさなくらいで丁度良いのだ。

今回は色々と考えさせられる、ほろ苦い夏休みとなった。

2 件のコメント:

  1. おつかれさまでした(^^
    シェルターはクフなんですね。
    僕もこれのタイベックスを使っています。
    実は僕達もこの先の天候を考えてkousakaさんの翌日に折立から下山しました。
    では、では。

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    1. ヤマモトさん、こんにちは。
      クフはバランス良くて使いやすいですよね。
      下山されたのですね、その後も天候は良くなかったみたいですもんね。

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