DAY 4: 双六小屋 - 千丈乗越(西鎌尾根) - 槍ヶ岳山荘 - 槍ヶ岳
* * *
朝目覚めると昨日の弱気は影をひそめ、先に進む気になっていた。
昨晩はそんなに冷えなかったのでよく眠れた。心身共に回復したのだろう。
準備を整え、いつものように6:20にスタートした。
準備を済ませ、まずは樅沢岳に登る。日の出を見るためにここに登る人も多そうだ。
山頂ではメールチェックを済ませ、これから進む道をぼんやりと眺めながら朝食をとった。
今回の縦走では「歩けば、着く」ということを当然のことながら実感した。
道はそのほとんどが尾根につけられているが、巻けるところは巻いている。
「左手に見えているやたら赤い山は何だろう」
「右側に見えている山小屋は何ていう小屋だろう」
見える景色ひとつひとつに興味が湧いてくる。子供のころみたいだ。
途中、鎖場が現れ、そこから先からは細尾根になっている。
鎖場も細尾根も、怖いと感じるほどのものではない。
天気が良いというのもあるかもしれないが、西鎌尾根は歩きやすいと感じた。
途中、バックパックに興味を持ったハイカーからあれこれ質問を受ける。
北アルプスではやはり伝統あるメーカーのバックパックを使っている人が殆どだった。
10:00に千丈乗越に到着。
樅沢岳からおよそ2.5時間強だが、稜線歩きのダイナミックさを感じながら歩けるのと
だんだんと槍に近づいていくのもあり、それほど長くは感じなかった。
しかし、ここから槍の肩までは1時間強なのに長い。
やがてスイッチバックでの登りに変わり、見える景色が変わらないのだ。
ずっと見えていた槍の穂先が遠く感じる。
普段は鼻歌を歌いながら歩くことが多いが、
この時はずっと「元気あれば何でもできる」と歩調に合わせ呟いていたように思う。
「比べたらまだ自分の方が近いな…」頑張ろうと思った。
ひたすら無になって(または猪木になって)登っていた。
途中すれ違った女性ハイカーに「山と道のリュックとサコッシュ、ショーツですね」と話かけられた。
その時は「どこかで見たことあるような…」と思っただけだったが、
下山した後でアウトドア関連の本も出版されている方だったと気づいた。
その時は本当に無になって登っていたので、笑顔で話かけられたことでかなり回復した。
男性女性関わらず、疲れている中で笑顔で挨拶や会話ができる人は本当に見習いたいと思う。
11:10、槍の肩に到着。
穂先に行きたい気持ちを抑え、まずはテントの受付と昼食。
ここに泊まりたいがために、Day 0で無理して富山まで移動したのだ。
(一日ずらすと三連休にぶつかるため、いっぱいになって泊まれない可能性があった)
テントの大きさを告げると、場所を指定される。この時は(F)だった。
とりあえずテントの設営を済ませたが、これは大丈夫だろうか…
ただし、テントからの景色は素晴らしい。
腰が重くなる前に穂先に向かう。時間は正午。
12:20、頂上に出た!展望は360度だ。
常念岳方面
穂高方面
乗鞍岳・笠ヶ岳方面
この4日間歩いてきた山々を振り返る。言葉が出ない。
雲一つない青空。そしてこれぞ北アルプスという景色。
名残惜しいが、15分ほど滞在して下山することにした。
下山で怖いのは梯子を跨ぐ最初の一歩だ。
そこさえ超えてしまえば、後は落石等に注意しながら下っていけばいい。
12:50下山。
山頂での滞在時間を除くと30分程度で往復したが、地図には1時間と記載してある。
それだけピーク時は渋滞するということだろう…。
牛丼を頼み、ホットココアを頼み、コーヒーを淹れ、ビールを飲みと贅沢な時を過ごした。
「槍ヶ岳は4度目で、穂先にガスがかからなかったのは初めてだ」という人もいた。
この日、日没まで穂先はこんな感じで、周囲の登山者は一様にご機嫌だった。
結局、16:00くらいまで(3時間!)山荘前のベンチで過ごした。
その間もひっきりなしに穂先には人が取りついており、皆それを肴に飲んでいる様子だった。
寒くなってきたのでテントに戻ると、今日もテントを珍しがって話しかけられた。
槍ヶ岳山荘とテント場はdocomoの電波が入ったので、久々にニュースなどチェックした。
山荘内には充電器まで置いてあった。
この日は中秋の名月(光っているのは月)。
星は期待したほど見えなかったけど、これもまたいいものかなと思った。
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